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平野丈夫 教授

平野:私の研究は、脳、神経系が働くメカニズムについての研究で、特に神経細胞の間で、情報を伝えるシナプスというところに注目しています。神経細胞の活動は、基本的には電気的な信号を伝えることです。電気的な信号というのは、細胞外から細胞内にイオンが流入する、または流出することによって、細胞の膜内外の電位差が変化することによって伝わります。シナプスでは、伝達物質という化学物質が放出されます。化学物質といってもまあ、たいしたものではなくて、たとえばグルタミン酸といったアミノ酸などですけど。それが受容体という分子について、そこでまたイオンチャネルが開いて、電位が変化するということが、わかっています。私の興味は、そういったシナプスがどうやってできてくるかということと、それが変化すること(可塑性)についてで、そのメカニズムを研究しています。
 神経細胞というのは、私たちの思考を制御していますし、また、シナプスを使ったり使わなかったりすることで、シナプスでの情報の伝わり方が変化します。そういったことが、私たちがいろんなことを学んだり覚えたりすることの基礎になっていると考えられています。実際にシナプスの制御がうまくいかないと、精神神経疾患・記憶障害に繋がります。私は、シナプスの制御メカニズムを知りたいということで研究をしています。主に、分子(タンパク質)レベルの研究と細胞レベルの研究をしています。どうして、どういうメカニズムで、シナプス伝達が変化するかということを調べているわけです。実際には、シナプス伝達は電気的な信号になりますので、それを測って、神経活動を変えた時に、それがいかなる変化をするかを調べています。シナプス伝達の効率は、たとえば受容体の数とか、放出される伝達物質の量で変わるのですが、そういうことがどのように起こってくるかということを、知りたいと思っています。さらに、そういうことを知った上でどうするか。私としては、あんまり役に立たなくても、自分の興味で研究をしてはいるのですが、どう役に立つかというと、さっき言った病気等にかかわるということがあります。シナプス伝達が変化した時に動物の行動がどうなるか知るために、遺伝子を改変したマウスの行動を調べる研究もしています。
 私たちが使っている主な研究手法は、まず神経細胞の活動、つまり電気的な活動を測るという実験で、これはいわゆる電気生理学ということになります。まあ一応、物理的な手法です。それに加えて、タンパク質を色々変化させるという実験、それから、イメージングと言いますが、生きている細胞で、分子がどう動くかということを、蛍光顕微鏡を使って解析するということも行っています。また、シナプスの伝達制御は、いろんな分子が関わるけっこう複雑な過程なので、それを理論的に研究するということも行なっています。化学反応を微分方程式で表現して、それをコンピューター上でシュミュレーションして、実際の結果をうまく説明できるかとか、または、シミュレーションから予想されることを実験的に証明できるかというアプローチもとっています。ということで、基本的には脳が働くメカニズムがわかればいいな、と思っているわけです。まあ、もう私もだいぶぼけてきましたから、最近は私の研究が、自分がアルツハイマーになるのを少しでも遅くすることにつながれば、うれしいなあとも思っていますけれども(笑)。

三輪:はい。ありがとうございました。